派遣先均等・均衡方式の流れについて説明します。
下記の順で待遇を決定していきます。
1 派遣元が派遣先に比較対象労働者の待遇に関する情報提供を依頼する
必要となる情報は、基本給・賞与・手当・福利厚生などの全ての待遇になります。
派遣元から情報提供の依頼があれば、派遣先は断ることはできません。
(実際は、事前に派遣元が派遣先に対して提供出来るかを聞いてからになると思いますが)
依頼は文面で行うことをお勧めします。
ただお願いするだけでは派遣先は動いてくれません。自分たちで書式を用意して、それに記入してもらうように手配すべきです。
なお、下記の厚生労働省のHPから参考書式をダウンロードすることができます。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/haken/youryou_2020other.html
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こちらのページの様式第25号になります。こちらをそのまま利用もしくは加工するのが手っ取り早いです。でも、こちらは細部に渡って記載するようになっているので、不要なものは削除してください。派遣先の抵抗が少なくなるようにするのがベストです。
2 派遣労働者の待遇の検討・決定
派遣先から頂いた情報を基に、派遣元が派遣労働者の待遇を検討して決定します。
検討する手順も決められています。
県内に10店舗ある株式会社ひまわりスーパーに派遣されているAさん。比較するのは、ひまわりスーパーの正社員Bさんです。このAさんを例にして説明します。
①派遣労働者を均等待遇・均衡待遇のどちらの対象になるか区分する
「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」から均等・均衡のどちらに当たるのかを1人1人確認します。
ではAさんについて確認します。
Aさん、Bさんともに販売職です。
AさんとBさんの中核的業務を比較します。Aさんは、接客、レジ、品だしが中核業務です。Bさんは、接客、レジ、品だしに加えて欠品商品の発注もします。
この場合は職務の内容が違うことになります。
仮にBさんがAさんと同じで接客、レジ、品だしが中核業務とします。ただし、Bさんは、お客様からクレームが出たときは一次対応をすることと、欠勤者がいて人手が足りない日や繁忙期などは残業をしないといけません。また、人事評価にフロアの売上も入っています。
この場合は、責任の程度が違うので、「職務の内容」が異なることになります。
次に「職務の内容・配置の変更の範囲」がどうなのかを確認します。
Aさん、Bさんともに転勤があります。ただし、Aさんは近隣の店舗への異動のみに対してBさんは県内全ての店舗への異動の可能性があり、場合によっては転居が必要になります。
この場合は、「職務の内容・配置の変更の範囲」が異なることになります。
結果、AさんはBさんと「職務の内容」「職務の内容・配置の変更の範囲」ともに異なるので、均衡待遇の対象になり、全ての待遇について不合理な差を設けないようにする必要があります。
(両方とも同じ場合のみ均等待遇=能力差が同じなら同じ待遇になります)
②派遣労働者と比較対象労働者の待遇が「同じ」か「異なる」かを確認する。
③個々の待遇ごとに、均等・均衡を点検する。
次のステップは、実際の待遇がどうなっているかを確認します。
ひとつひとつの待遇について、性質や目的がどうなのかを確認し、派遣労働者と比較対象労働者の間で「違い」が有るときは「違い」が不合理な待遇差になっていないかを見ていきます。
合理的か不合理か判断が難しいときは、派遣労働者から『なぜ待遇差が違うのか教えて欲しい』と聞かれたときに、ちゃんと自信をもって相手が納得いくように説明できるかどうかで考えてください。
もし違っている理由が、「派遣だから」とか「将来の役割期待が違うから」といったものであれば納得してもらえますでしょうか?
例えば「役職手当は、役職者に対して支払っているが、同じ役職である派遣のAさんと社員のBさんでは、勤務時間に差があるので、時間差に応じてAさんはBさんより額が少ない」とか、「通勤手当は、交通費を全額支給しているが、自宅から会社まで2キロ以内の人は徒歩通勤とみなし全ての対象者には支給しないこととしているので、2キロ以内に住んでいる派遣のAさんには交通費は支給しません」といったように納得いくように説明できなければ、均等・均衡待遇でないと言えるかもしれません。
④待遇差がある場合は是正し、派遣労働者の待遇を決定します。
最後に待遇差を修正してようやく派遣労働者の待遇が決まります。
3 派遣先と派遣料金の交渉
4 労働者派遣契約の締結
均等・均衡方式で決定した賃金にマージンを上乗せした料金で派遣先との交渉になります。
以前より料金が高くなることが多いと思いますが、同一労働同一賃金によって料金が上がっているので、派遣先はその点を配慮するように求められています。
肝となるのは、1の派遣先から情報を提供してもらうことです。現実的には、グループ会社など特に親しい関係でない限りは難しいのではと思います。ただ、複数ある派遣元の料金を同じレベルに合わせたいと考えているような派遣先にはこのやり方は合っているのではないでしょうか。