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派遣労働者の同一労働同一賃金⑦ 労使協定書をつくるときに気を付けること(前編)

前回までのブログで、労使協定を結ぶまでの進め方や気を付けることについて説明してきました。

今回は、実際の労使協定を作成及び締結に際して気を付けることを述べていきます。

 

 

1.協定対象労働者の範囲を明確にすること

 「対象労働者は派遣に従事する全従業員とする」、「派遣先で指揮命令を受けて業務に従事する従業員」など、記載の仕方は自由です。対象者が誰かはっきり分かれば問題ないです。

また、同じ派遣元で派遣先均等・均衡方式と労使協定方式が混在していることは特に問題がありませんが、その際は必ず、誰が派遣先均等・均衡方式での対象者で誰が労使協定方式の対象者かを明確に定めておく必要があります。

 

明確に定める方法として、「派遣先で販売の業務に従事する従業員」「派遣先でソフトウェアの開発に従事する従業員」といった職種で区別する方法、「株式会社〇〇でプログラマーの業務に従事する従業員」といった企業ごとで区別する方法、「期間の定めのある雇用契約で雇用される派遣労働者」「派遣労働者のうち、パートタイマー」といったように雇用契約や雇用形態で区分する方法などがあります。

 

 

2.賃金の決定方法を記載すること

 労使協定の中で、おそらくここが一番ボリュームを持たせて記載しないといけない箇所になると思います。

賃金を決めるにあたって、比較対象とした「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、どの統計資料のどの職種のものなのかを定める必要があります。

通常は局長通達にある2つの統計資を用います。そして「平成30年賃金構造基本統計調査」の〇〇(例 プログラマー)とか、「職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」の〇〇など、必ずどの統計資料のどの職種と比較したのかを明確にしておくことが求められます。

そのうえで、別添資料に比較対象とした職種の基準値(0年)、1年~20年の賃金と、自社の派遣従業員の基準値、1~20年の賃金を並べた表を記載して、同等以上の額であることを示すのが、分かりやすく比較できてお勧めです。

 

なお、職種ごとに統計資料を使い分けたり、局長通達で示された以外の統計資料を用いることなども可能ですが、その際は、どうして使い分けたのか、なぜ別の統計資料を使ったのか、その理由を協定書に明記する必要があります。

 

また、地域調整の指数は、都道府県別、ハローワークの管轄別のどちらを利用したのかも記載しなければなりません。

 

 

3.昇給について

 昇給もまた、今回の同一労働同一賃金において重要なファクターになりますので、しっかりと記載する必要があります。

条文には「派遣労働者の職務の内容、成果、能力、経験等の向上があった場合には、基本給について、賃金改定をする」といった文面を入れておいてください。

そして昇給額の提示については、賃金テーブルを作成して別表として添付します。これが理想的なやり方です。

 

これが難しいようでしたら、「派遣労働者の勤務評価の結果、同じ職務の内容であったとしても能力、成果、経験等の向上が認められた場合には、基本給額の1~3%の範囲内で能力手当を支払うものとする」という曖昧な形で記載する方法を取ってください。

 

さらにその方法も難しい場合は、職務の内容をA、B、Cの3ランクに分け、同種の業務に従事する一般労働者の能力・経験と比較して、Aが10年、Bが5年、Cが0年(基準値)相当とするという方法を取ります。この場合は、賃金のアップが3段階しかなく、かつ昇給のレンジに幅があるので、頻繁に昇給をする必要はありません。企業体力があまりなく、今後のことはこれからじっくり考えるとして、まずは協定を結ぶことを優先したいという会社はこの方法が良いかもしれません。ただし、Aランクで頭打ちだと派遣労働者のモチベーションも上がらないので、「職務内容等の向上があった場合には、より高度な業務に係わる派遣就業機会を提供するものとする」の一文は必ず入れてください。

 

なお、現在ある賃金規定をそのまま適用する場合は、「昇給については、賃金規定の第〇条を準用する」と記載するだけで大丈夫です。

 

 

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