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新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例~さらなる特例の緩和について

先日のブログで、新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した企業が、従業員を解雇することなく、休業させ雇用を維持した場合、その際の休業補償を助成する雇用調整助成金の特例について解説しました。

 コロナの影響はその後減少することなく、ますます拡大していく一方で終息まで、まだまだ時間を要すると予測されます。また、感染拡大を防止するために事業活動を一時的に休止する事業主もみえるのではないでしょうか。そこで、3月28日に行われた安倍首相の記者会見で、雇用調整助成金の特例措置を更に緩和していくことが発表されました。

 今回のブログでは、前回のブログから変更した点を赤字で記載して解説しています。

 

○雇用調整助成金とは

 

そもそも雇用調整助成金というのは、景気の変動や産業構造の変化などの経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇などの雇用調整をすることなく、一時休業や出向などを行うことで、歯を食いしばって雇用の維持を図った場合に、休業手当や賃金等の一部を助成するものです。

この助成金自体は通年行われているのですが、大規模な災害が起きたときにはしばしば特例を実施し、助成金の範囲を広げたりする措置が執られます。

例えば、昨年は台風15号、19号、29号、21号の被害により休業や売上げ減少した企業に助成金が支給されました。

ただ、自然災害は地域が限定されるのに対し、コロナウイルスの影響による売上げや客数の減少は日本中で起こっているため、支給要件に該当する企業も多いと思われます。

 

 

○対象となる企業(事業主)

 

今回の助成金の対象になるのは、新型コロナウイルス感染症により影響を受け、売上高や客数、件数が前年の同月より5%以上減少した企業(事業主)になります。

影響を受ける具体的な例は、

・取引先が新型肺炎の影響を受けて事業活動が縮小した結果、受注量が減少したために事業活動が縮小した場合

・国や自治体からの自粛要請の影響により、市民の外出等が自粛され客数が減ったために事業活動が縮小した場合

・風評被害により観光客のキャンセルが相次ぎ、これに伴い客数が減ったために事業活動が縮小した場合

などが挙げられますが、現在の状況では、大なり小なりコロナの影響を受けている企業が多く、幅広く適用されるのではないでしょうか。

 

 

○通常の雇用調整助成金と特例の内容の違い

 

まず、期間ですが、従業員を休業させたり出向させたりした際の初日が、令和2年1月24日から令和2年7月23日までというように、期限が定められています。

その他にも

①休業等計画届の事後提出が可能

 通常は、休業等を行うにあたって、事前に労働局かハローワークに休業等の計画届を出します。(基本的に助成金というのは、事前に計画届を出します)

ただし、今回は急を要するため、令和2年1月24日以降に初回の休業等がある場合は、令和2年6月30日までに計画届を提出すれば、事後であっても休業等の前に計画届を提出したものとみなしてくれます。

 

②生産指標の確認対象期間を3か月から1か月に短縮

 生産指標とは、販売量や売上高などの事業活動を示す指標です。が、4月1日~6月30日までは、前年同期と比べて5%以上減少していれば助成の対象になります。通常の雇用調整助成金では、3か月間を比較して減少していないといけないのですが、特例では直近1か月が前年比マイナス5%であれば対象になります。

※4月~6月以外は、前年より10%以上減少が条件になります。

 

③最近3か月の雇用指標が対前年比で増加していても助成の対象

 通常では、3か月間における雇用保険に加入している従業員や受入れている派遣労働者の人数の平均値が前年同期比で一定程度増加している場合は助成の対象にはなりませんが、特例ではこの要件は適用されません。つまり最近3か月の間に大勢の従業員を雇用し始めていても対象になるということです。

 

④事業所設置後1年未満の企業(事業主)も対象となる

 本来この助成金は前年度の指標と比較して支給要件を確認するので、当然前年の同月に事業活動を行っていないと助成金の対象になりません。ただし特例では、令和2年1月24日時点で事業所設置後1年未満の企業は、令和1年12月の指標と比較し、販売量や売上高等が5%以上低下していれば対象になります。

 

○助成額

 

休業を実施した場合の休業手当又は、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対する助成率

  中小企業 5分の4   大企業 3分の2

※ただし、従業員を解雇しなかった場合は、中小企業が10分の9、大企業は4分の3まで助成額が増えま

 

・支給限度日数

  1年間で100日もしくは3年間で150日プラス4月1日~6月30日までの期間

 ※4月~6月いっぱいまでは、100日にカウントされません

 

○助成金の対象

 

 この助成金の財源は雇用保険になります。ですので、申し込みが出来るのは、雇用保険適用事業所の事業主のみになります。

ただし、支給対象となる従業員は、雇用保険に加入していないパートタイマーやアルバイトも含まれます。また、4月から入社予定の新入社員が、いきなり自宅待機というようなケースであっても対象になります。

 

○その他

 

・残業相殺が停止

 本来であれば、この助成金の対象者が計画期間中に出勤して残業をした場合、助成金から残業代分が差引かれます。これを残業相殺といいます。残業させるならば普通に出勤させればいいよね、ということで一種のペナルティーです。

ただ、4月1日~6月30日に関しては、たとえ出勤時に残業をしてもその分を相殺することはしません。

・短時間一斉休業の要件緩和

 終日休業にするのではなく、1日の労働時間を短くする場合も対象になります。この場合は、1時間以、かつ、全員一斉に休業する必要があります。

 この要件が緩和されるとのことですが、詳細は分かりません。

 

また、支給迅速化のため事務処理体制の強化、手続の簡素化を行なうことも発表されましたが、詳細は不明です。とはいえ、通常は計画期間終了後、休業手当を払ってから申請→審査→支給という流れで、支給まで3~4か月かかっているところが早くなれば、大変喜ばしいです。ただ、非常に多くの企業が申請すると思われるので、どれくらい早くなるかは何とも言えません。むしろ遅くなる懸念もあります。

手続に関しては、この助成金はかなり難易度が高いです。ですので、簡素化されれば申請までの時間が短くなるのでありがたいです。

 

その他支給に関しては条件がございます。

不明な点がございましたら、こちらにメール、もしくは(052)766-6510にお電話をお願いします。

 

コロナウイルスの影響はまだまだ続くと思われます。緊急を要する助成金ですので、該当しそうであれば社労士かお近くの労働局にご相談してください。

 

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